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2005/01/21

平成の洛中洛外図ですか・・・

先週の日曜日放送のNHK教育の「新日曜美術館」で
平山郁夫氏の「平成の洛中洛外図」が紹介されていた。

平山郁夫氏は、日本画壇の頂点に立つと言われるひとだ。
だが、その日本画壇というものは、画家をランキング付け
して、そのランキングに応じて号いくらという値付けに
なると言う、はっきり言って、その絵の価値とはなんの
関係もないことで作品の価格が決まると言う、かなり疑問
のあるシステムである。
こういったシステムゆえに、日本のアートマーケットは、
世界のアートマーケットとは何の関係もない閉鎖系システ
ムであるとして、大いに批判をされることとなる。
村上隆などは、こういったシステムに拘束されないために
海外のアートマーケットの中でプレゼンスを獲得するため
の戦略をとった訳だ。
で、こういったシステムの象徴として、平山氏も、大いに
批判をされることが多い。

しかし、一方で、平山氏が行っている海外との文化交流は
これは評価されてしかるべきである。
知人に平山氏との交流のある人間がいるのだが、その人の
話を聞くと、例えばバーミヤンの大仏の保護や、敦煌の保護、
高句麗時代の古墳の保護など、決して名誉欲だけではなく、
本気で文化財を継承していくために日本人としてできること
は、ということを考えているとのことだ

ということで、平山氏を取り巻く毀誉褒貶のベールは厚い
のだが、そういったことを剥いで、彼の作品はあくまでも
作品としてみてみたい。
すると、やっぱり批判せざるを得ないんだなぁ。
今回の「平成の洛中洛外図」は。

洛中洛外図は、上杉本や東博本、舟木本などの名品がある
訳だが、これは、単に京都の街の建物・風景を、鳥瞰で描
いたことに意味があるのではない。
そこには、祇園祭の祭礼であるとか、宮廷行事であるとか
当時の商売の姿であるとか、町に遊ぶ子供たちであるとか
京都の街に生きる人々の風俗が生き生きと無数に描かれて
いることにこそ、その面白み、楽しみがある。
rakuchu

ところが、少なくとも紹介されている限りにおいては、この
「平成の洛中洛外図」は、今の京都の風景が、もちろん
取捨選択はされているものの、鳥瞰図として描かれている
だけのようで、そこに人の営みはまったく描かれていない
ようだ。
その対象の描写力や筆致の華麗さといった画力が、そこに
いくらあったとしても(あるかどうかもわからん)この点
だけで、「あなた、曲がりなりにも『平成の洛中洛外図』
と言っているわりに、洛中洛外図の本質をとらえ損ねてい
ないですか?」と問いただしたくなる。
例えば、宵宮で無数の人で通りが埋め尽くされている現代
の祇園祭であったり、市内各所の櫻の名所の花見風景だっ
たり、さらには鴨川河原の等間隔カップルであったりを描
き込んでこそ、「平成の洛中洛外図」と言えるのではない
だろうか。

また、右隻左隻それぞれ京都御所と二条城を中心に描いて
いるらしい。
それは、例えば町田本が内裏と室町幕府、下京と上京とを、
勝興寺本が御所・方広寺と二条城とを、右隻左隻に対比の
構造で描き分けているのを真似ているのかもしれないが、
それは単に地理的な描き分けではなく、政治・文化的象徴
性の対比を含んでいるのである。
だから、今の京都であれば、むしろ御所と二条城は同じ隻
に描き、例えば京都駅なんかをもう一方の隻に描いて、伝
統を守る京都と新しい姿を見せる京都という対比を見せて
こそ、「平成の」と銘打つ意味があるのではないか。

単に鳥瞰図を描くのであれば、鳥瞰地図の名人、石原正さん
で十分な訳で。


とりあえず、関西での展覧会予定は、以下の通り。
開催日時:2月3日(木)~15日(火)
会  場:京都・大丸ミュージアムKYOTO(大丸京都店6階)
開館時間:午前10時~午後8時
    (最終日は午後5時30分閉館、入館は閉館の30分前まで)
入場料:()内前売り、団体(10人以上)料金
    一般800円(600円)
    大高生600円(400円)
    中学生以下無料

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コメント

TBありがとうございます。
私の言いたいこと思ったこと
全て代弁してくださってます。
しかも素晴らしく明瞭な文。

堪能しました。

投稿: Tak | 2005/01/22 23:31

Takさま、コメントありがとうございました。
いや、過分なほめ言葉、恥ずかしい。

ただ、随分長いこと、いろいろ見てくると、
自分なりの見方は、なんとかできるように
なり始めています。
まだまだ、中途半端ではありますがね。

これから、アートものも少しずつ言及して
いこうかなと思います。
今後とも、よろしくお願いします。

投稿: 六甲びと | 2005/01/26 19:43

こんにちは。
ブロガー友達のTakさんのところから
やって来ました。
わかりやすく、明瞭な文章で、堪能しましたし、
とっても勉強になりました。
特に、御所とJR京都駅 の対比。
あぁ、納得!!です。

ところで・・貴blog拝見されて戴いてオドロキ。
新地のミヤンの常連さんでらっしゃいますか!
私も 常連 とまでは言えないけど、
ちょくちょく行くんですよー。
友人がオーナーや店長とお友達、というか、
常連なんです。
いつかお会いするのかもしれませんね。

投稿: はな | 2005/02/06 14:23

はじめまして。
平山画伯の絵を論じられたこの文章のあまりの的確さに
感銘を受けてTBさせていただきました。
まずはご報告まで。

サッカーもお好きなようですし、素晴らしいサイトに巡り合いました。
またお邪魔します。

投稿: Kyo-to | 2005/02/14 00:51

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