神戸住吉山手『小寺邸』
先日、紹介した住吉山手住宅地。
現存する企業家の豪邸では、『旧乾邸』と並んで、
すばらしい住宅建築である『旧武田邸』。
その横の坂道を上がっていくと行き当たるのが、
ここ、『小寺邸』。
大日本紡績の社長であった小寺源吾氏が婿養子と
なった小寺成蔵氏の長男、小寺敬一氏(関西学院
商学部教授)関西で活躍したアメリカ人建築家、
ウィリアム・メレル・ヴォーリズ氏に設計を依頼し、
昭和4年に完成した。
ヴォーリズは、家庭常備薬、メンソレータムの販売元、
近江兄弟社の起業者であり、日本国中に千件以上の
建築物を残した。
代表作と言っても、学校建築だけでも、阪神間の関西
学院大学、神戸女学院大学、聖和大学、京都に同志社
大学、同志社女子大学、さらに明治学院大学、西南学院、
西南女学院、活水学院など。
大阪心斎橋大丸百貨店に、東京の山の上ホテル、京都
の四条河原町鴨川河畔の東華菜館。
住宅では、京都は御所横の下村邸(大丸ビラ)、北白川の
駒井邸 、東京の朝吹邸(東芝高輪クラブ) 、静岡は
マッケンジー邸、そして神戸の室谷邸など。
すざまじい数の建築を残している。
住宅建築としては、この『小寺邸』は代表例ではないか。
スパニッシュミッションスタイルという、米国カリフォルニアの
教会建築様式を日本に取り入れ、赤い瓦、小造りの庇、
白く明るい壁など、軽快かつ華麗な特徴を持つ。
ある意味では、阪神間山手の住宅街の基調イメージを
つくったのが、ヴォーリズの住宅であった。
阪神間夙川の北側の殿山町、雲井町にあった住宅群も、
同様の意匠で、阪神間らしい風景をつくっていたのだが
阪神淡路大震災で、壊滅的なダメージを受けてしまい、
ほとんど残っていないのが残念。
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