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2005/09/09

『送り手のメディアリテラシー ―地域からみた放送の現在』で関西メディアを考えてみましょう

以前、メディアリテラシーについてのエントリーもしたことがあり
ますが、関西に住んでいる人間としてメディアリテラシーを考え
るのに、なかなか良い本が出ました。

日本放送労働組合関西支部でおこなわれた連続セミナーをもと
に、関西の放送業界の人間、メディア研究者などが寄稿したもの。

構成は、以下の通り。

序章 送り手のメディアリテラシー―関西の放送はどうあるべきなのか
第1章 関西ローカルの新しい形をめざして
第2章 関西のスポーツジャーナリズムを考える
第3章 メディアリテラシーの空間・学校・家庭
第4章 “共生”のために求められる地域放送とは
第5章 地域の放送資源の再発見のために
対談 地上デジタル時代の地域放送に向けて
    ―送り手に求められるもの(音好宏/黒田勇)

われわれ関西のスポーツファンとして、特に注目すべきは
第2章の1.「プロ野球報道の偏りと無定見 関西、パ・リーグ、
南海ホークスという立場から」です。
この節の担当は、『南海ホークスがあったころ』という著作の
ある関西大学社会学部教授の永井良和先生
(“赤き血のイレブン”じゃないよ~(^^))

以前、私もオリックスと近鉄の合併問題の際に関西メディアの
阪神偏重の問題についてエントリー
したことがある。

私が、感覚的に語っていたにすぎないことを、事実を踏まえて、
関西メディアの阪神報道の量的偏向についての批判的検証を
おこなっておいでです。

もともとは、関西のプロ野球でも、本来はメディアによって支持
するチームが異なっていました。
例えば、関西テレビは阪急、朝日放送は近鉄でした。(南海は
記憶がないんだよな)
それは、メディアだけではなく、関西圏独特とも言える私鉄沿線
文化の象徴でもあったのです。

もちろん、巨視的に言えば、阪神が一番だったことは間違いない
し、85年の21年ぶりの日本一の時は阪神一色だったのですが、
それでも、その後も、10・19の近鉄であったり、「がんばろう神戸」
の際の仰木・イチローのオリックスなど、揺り戻しもあった。
しかし、一昨年の阪神の優勝の際には、完全に阪神一色に集
約され、塗りつぶされてしまい、その後もかわらない。

そんな中で、去年大阪近鉄がなくなってしまったわけですが、
その過程で関西のローカルメディアは、多様な関西文化や大阪
文化の危機だという意識で伝えなかったことが、本当に問題で
した。
特に、関西の文化の複雑性や多様性を支えていた私鉄沿線文
化の崩壊という視点で、メッセージを出すことができなかったの
が致命的であったように思います。

東京から発信される、関西=大阪=阪神=道頓堀というステレオ
タイプに、大阪のメディア自らが乗ってしまった。

それは、大阪がメトロポリタン(大都市)性を失った象徴とも言える
でしょう。本来、大阪ぐらいの巨大都市になれば、当然のこと、多
様性を持っており、単一のイメージなどでは括れないんはずです。
しかし、全国ネットとローカルという関係性から、東京のメディアが
完全に大阪=関西のことを一地方都市という視点でかため、ステ
レオタイプで大阪を切ってしまうようになった。
そして、ここが問題なのですが、それを大阪のメディア人が、完全に
受け入れてしまう。
そして、最悪なのは、メディアの中だけでステレオタイプなイメージが
垂れ流されるだけではなく、それを大阪人(メディア人だけではなく)
も、受け入れるがごとくそのイメージに合う行動を行うようになって
きてしまったことです。

永井先生は、他の研究で、ハワイのメディア上のイメージの研究を
されておいでなのですが、ハワイもアメリカのメディアや音楽、映画
などが押し付けた「最後の楽園」というステレオタイプを、完全に飲
み込んでしまい、自分で脚色して自己イメージを変えて生きてきた
ということを、論述されています。

それと類似のことが、それぞれの国において、シカゴであったり、
バルセロナであったり、上海であったり、メルボルンであったり、
釜山であったり、に相当する大阪という街におこってしまった。

しかし、永井先生の研究の最後にあるのですが、ハワイ側も最近
多様性を取り戻そうというさまざまな試みを行い、その結果アメリカ
本土のメディアとの大きな文化摩擦に直面しているとのことです。

大阪が、このまんま、東京メディア発のステレオタイプを内在化して
生きるのか、メディアの中でも多様性を取り戻すことができるのか。

特にスポーツ面や文化面での多様性の復活には、メディアが大きな
力を担うことになります。
本書は、ステレオタイプなローカル像の再生産ではない、ローカル
アイデンティティの構築を行うために、送り手に求められる視点とは
何か、をメディアに関わる人が、さまざまに論述しています。

一読に値すると思います。


あと、阪神タイガースが関西=大阪の象徴となってしまった、
そのプロセスを、カルチュラル・スタディー的に検証をされている
本が、井上章一先生の『阪神タイガースの正体』です。
こちらもご参考に。

<本エントリーのTB先>
本エントリーでは、関西での阪神戦偏重の問題を語って
いますので、プロ野球中継の問題をトータルに語っている
プロ野球の視聴率を語るblogさんにTBしておきます。

関西のマスコミやメディアはなぜ「阪神ダイガース」一辺倒なのか、
という問いを掲げておいでのドラジェfrom北河内さん


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コメント

返事遅くなりました。
トラックバックありがとうございます。

管理人さんの気持ち、痛いほどわかります。

私は近鉄ファンというよりね、近鉄をめっちゃ「応援したかった」ファンなんですよ。

実は野球を見だしたの自体が、3年前くらいからなんですよ。
やっと興味持ち始めて見だした頃に、丁度星野さんが就任して、周りも阪神ファンしかいなかったので甲子園には何回か行ったけど、ほんとはずっとバファローズの応援に行きたかった。
でも仕事で大阪を離れたりしてた事もあって、結局行けずじまいで無くなってしまった…。

だから今年はそのうっぷんを晴らすかのように「合併したけどバファローズだ!」て事で応援に行ってます。
大阪らしい応援も好きです。

『阪神』だけの関西。
強いからしょうがないけど、少し最近は悪乗りが多いように思えますね。

また覗いてもらえたらなと思います。

投稿: ドラジェ | 2005/09/18 00:54

ドラジェさん、コメントありがとうございます。
返事が遅くなって申し訳ありません。

私は、阪神タイガースファンではありませんが、
アンチでもありません。
また、基本はフットボール(ラグビー&サッカー)好き
ですが、野球が嫌いな訳でもありません。
幅広くスポーツ好き(エンタメ好き)であります。

ですから、一部のファンにあるように、他スポーツへの
嘲笑とか挑発的な書き込みとかには与しません。

しかし、現状の余りに偏った報道のあり方については、
強く異議を申し立てたいと思います。

現状、関西での人気がNo1で、かつ優勝までカウント
ダウンが、阪神が多くなるのは、当然だと思います。
しかし、プレーオフ進出争いをしているオリックス、
そしてJで首位に立つガンバ大阪についても、
もう少し扱いの比率を上げてほしいと思っています。

投稿: 六甲びと | 2005/09/22 23:45

>東京から発信される、関西=大阪=阪神=道頓堀というステレオタイプに、大阪のメディア自らが乗ってしまった。

関西の放送局も関西の人や大阪の人ばかりではないので、そういうことも関係しているのではないでしょうか。

大阪や関西ダイアから阪神でいいのでは?と制作者側、アナウンサーがそう思い込んでいることが多々あることも感じます。

投稿: momo | 2010/02/13 18:27

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