映画『ホテル・ルワンダ』を見て、考え込む(1)
映画「ホテル・ルワンダ」を見た。
1994年に、アフリカのルワンダで起きた、民族分裂にともなう
大虐殺時に起こった一人の勇気ある行動をもとにした映画。
こんなことをよそ者である日本人が書くと、今でもツチ及びフ
ツのアイデンティティを誇りにしている方々には失礼になるの
かもしれないが、ツチとフツは、生物学的にも、また言語、宗
教的にも、異なる民族とは思えないものらしい。
(ただ、今のルワンダでは、一切の民族別証明を排除した改革
と教育プログラムが実施され、フツ、ツチという用語の使用す
らも、厳禁となっているらしいので、問題はないのかな)
19世紀ごろから徐々に「フツ族」「ツチ族」として分かれ始め
た両者を、決定的に分裂に追いやったのは、ここでもご多分
に漏れずヨーロッパの植民地支配。
特に、第一次世界大戦後に、ルワンダを支配下におさめた
ベルギーが、「よりヨーロッパ人に近い容姿」を持っていると
して少数派「ツチ族」を優遇。
さらには、すべてのルワンダ人を「フツ族」、「ツチ族」、
「トゥワ族」に分類し、人種が記されたIDカードまで発行し、
また教育(それも差別的なものだったらしい)を通じて、“民
族”間の分裂を急激に深めていった。
その結果、反目しあうようになったツチとフツは、ベルギーか
らの独立のプロセスの中で、支配者ベルギーに寄り添うカタチ
での少数支配者であったツチへの、フツの反乱、支配権獲得。
さらには、フツの中でも強硬派による軍事クーデター、ツチへ
の弾圧。それに対抗するツチ中心のルワンダ愛国戦線(RPF)
の反乱といったかたちで、お互いに対する憎悪を強めていき、
ついには、内戦状態となった。
そして、フツの大統領の飛行機撃墜事件をきっかけに、多数派
フツによる少数派ツチの大量虐殺がはじまる。
ただツチであるというだけで、殺されていく。
一方、RPFが反攻の末、支配した地域では、フツに対する「民
族浄化」も始まる。
あとで明らかになるが、約100日間で、ルワンダ国民の10人に
1人、80万人以上が虐殺されたという。
この事態の中、ルワンダの首都キガリ屈指の高級ホテル、ミル
コリンホテルの管理を任されたポール・ルセサバギナ氏。
彼が、この物語の主人公。
ルセサバギナ氏の行動は、民族虐殺の波の中で、大勢の人の命
を救った個人と言うことで「アフリカのシンドラー」とも言わ
れるそうだ。
最初の動機は、ツチである妻及び親戚を救いたいという一点
だったように思う。
しかし、ホテル内に逃げ込んできた1,000名以上もの人を見て、
頼られるうちに、何があろうとお客様を守ろうとするホテルマン
としての矜持。
そして、人間として当たり前の隣人愛。
この二つが、彼の尋常で無い勇気と行動力を生み出す。
何か不穏な事態が起こった時に助けになればと準備をしてきた
高級ホテルの支配人として蓄積してきたさまざまなコネクショ
ンを駆使し、ホテルそのものを守り、最終的には、避難民全員
の難民キャンプへの脱出を実現することとなった。
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