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2006/03/07

映画『ホテル・ルワンダ』を見て、考え込む(2)

しかし、この映画で描かれているルセサバギナ氏の姿は、
超人的な力で弱者を救うハリウッド的スーパーヒーローで
はない。本人も弱者でしかなく、ある意味では、他者の救
いの手を待つしかない存在だ。

だが、そのような中でも、その救いの手が届く可能性を少
しでも高めるために、自らの行い得ることの極限まで行う。

ここにこそ、このストーリーの感動の源泉と教訓がある。
まさに、『自助論』に言う「天は自ら助けるものを助く」姿だ。
それが、結果として、多くの人を救ったのだ。

だから、この映画が、私に問いかけてきたものは、まずは、
「同じようなとてつもなく困難な状況になった時に、他人を救
えるか?」ではなく、「同じようなとてつもなく困難な状況に
なった時に、あなたはルセサバギナ氏のように、諦めずに
アクティブに行動を取り続けることができるか?」
ということ
のような気がしている。

そして「とてつもなく困難な状況」というのは、民族虐殺のよ
うな場面だけではなく、例えば、映画「生きてこそ」のアンデ
ス山中への飛行機の不時着であったり、それこそ「1リットル
の涙」
のとてつもない難病であったり、まで含めて考えるべき
なんだと思う。

あなたは、極限的な状況に追い込まれたときに、どこまで
アクティブに行動することができるか?
諦めずに、一歩ずつでも行動することができるのか?

私にとって響いたのは、まずはこの点だ。


そして、もう一点。
ここで描かれたのは、民族対立の感情が、極限まで行き着
いてしまっているという状況。
しかし、不慮の事故とか難病とか避けられないものとは違い、
民族虐殺が起こると言うこんな極限的な状況は、そこに至ら
ない、そこに追い込まれないための前段階の努力の方が、
本来はもっと必要な訳だ。

“融和”という言葉、“共生”という言葉は、最近の世界情勢
を見るに、どうにも甘ったるいようにも感じられるのだが、
それでもどこかで“憎しみ”の状況への歯止めは必要だ。

だから、
直接命を救ったルセサバギナ氏、シンドラー氏、杉原千畝氏
らの行動を称えると同時に、
では
なんで、民族という属性だけで括られた他者を、ここまで憎む
ことができるのか?
そんな“憎しみ”の状況を生み出してしまうものは何なのか?
こういったことを問わなければならないのだと思う。

そして、それを避けるための方法は何か、ということを問わな
ければならないのだと思う。


さて、そんなことを考えているタイミングで、以下のような
フォーラムが、千里の国立民俗学博物館で開催されることを
知った。


ジェノサイド後の社会の再編成

こちらのフォーラムは、グアテマラの大量虐殺をとりあげ、
そこで実践されている開発プログラムを通して、民族虐殺後
の社会の再編成を考えるというのが主題。

会場】国立民族学博物館第4セミナー室
開催日時】3月11日(土)13時30分~18時00分
参加費】無料
申込み】申込み不要、当日先着80名
問合せ先】国立民族学博物館 関研究室
     TEL:06-6878-8252 
     e-mail:sekiken@idc.minpaku.ac.jp

<本エントリーのTB先>
まずは、この映画の日本公開にこぎつけた「『ホテル・ルワ
ンダ』日本公開を応援する会」代表に敬意を表してTB。
『ホテル・ルワンダ』公開まで続ける活動日誌さん

そのほか、先行して感想をUPされている方々にTB。
アロハ坊主の日がな一日さん
お玉おばさんでもわかる政治のお話サン
[K]こあら日記さん
ココロにおいしいシネマさん
シネマコミュニケーターmori2の“シネマ雑記帳”さん
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茸茶の想い ∞ ~祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり~さん
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コメント

はじめまして。TBさせていただきました。
何ができるんだろう・・・皆考えることですね。でも、その前に、知らなすぎると言うことも大問題・・・
一人でも多くの人に、見てほしい、知ってほしい、そんな思いです。

投稿: カオリ | 2006/04/09 00:38

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