アニメ映画『時をかける少女』と『ゲド戦記』をめぐる言説(その2)
(その1)からの続き
さて、あまり宣伝もされていない本作がけっこう
混んでいたのは、内容のよさが口コミで広がって
いるのかな、昔のウォン・カーワイの香港映画み
たいなもんかなと思ったが、「あ、そうか、今や
ネットがあるんだ」と思いなおし、ググッてみたら、
やはり、ネット界で、けっこうな話題になっている
ようですネ。
「ゲド戦記」や「ブレイブ・ストーリー」といったテレ
ビ局とがっつり組んだブロックバスター型大作ア
ニメと比較し、その作品の良質さ(翻って、大作の
方の出来の悪さ)が強調され、にも関わらず大作
の観客動員が好調でマーケティング上ヒットして
いることに違和感を感じているエントリーがたくさ
んありますね。
コンテンツビジネスを展開する側からすると、作品
の質の良さによって、発表後にじわじわチャートを
上げて売上をあげていくというスタイルは、実に計
算しにくい。
そのため、最近のエンタテインメントコンテンツは、
とにかく初動の大きさでビッグビジネスにするため
に、公開前/発売前にとにかく話題を大きくする、
という手法をとりがちです。
特にテレビ局が組むと、その圧倒的なメディアパ
ワーによって、自社コンテンツをあたかも世間的な
ニュースであるがごとく情報流布をさせることになる。
これが、作品の質を受け入れられない人間にとって
は、とてつもなく胡散臭い構造に見えてしまう。
それに対して、今回の「時かけ」は、そういう構造が
見えないところも、作品の良質さ以上に好感をもって
受け入れられる要素なのだろう。
ただ、「時かけ」だって、実は角川という現在のアニメ
界にとっては巨人の作品なんですけれどもね。
さて、作品の質については、私は大作の方を見てい
ないので、なんとも言えない。
「ブレイブ・ストーリー」は見に行こうとは思っている
が、「ゲド戦記」の方は、見に行く気すらない。ジブリ
作品は、もともとは好きだったのだけど、その作品
内容の変化と、ブロックバスターの押し付けがましさ
の両面から、なんか嫌な感じになって、前の「ハウル」
から見ていないのだ。
どれだけ好きだったかと言うと、その昔、アニメージュ
誌上で募集していた「風の谷七人衆」に参加したほど。
「風の谷七人衆」をご存じない方に説明すると、ファン
が7名単位でグループを作って、徳間書店内に設置さ
れた事務局に登録すると、映画に使われたセルがプレ
ゼントされるとともに、制作途上のナウシカに関する資
料が送られてきます。そして、それを基に、ナウシカ新
聞ってのをつくり事務局に送ります。優秀作はアニメー
ジュ誌上に掲載される、という企画でした。
浦和レッズのオフィシャル・サポーターズ・クラブみた
いなもんですね。
今だったら、絶対ネットで、例えばSNSとか、ブログ
パーツみたいなかたちで行われるであろう、ファンとの
双方向のコミュニケーションを事前におこなうという、
かなり先駆的な試みだったんですよね。
こんなことをやっていたんですよ、初期のジブリは。
いつ頃からかなぁ?
こんなブロックバスターになっちゃたのは。
<本エントリーのTB先>
『時かけ』と『ゲド戦記』のマーケティング上の問題に
ついて触れているエントリーにTBを。
- ないとうの気ままな(?)日常サン
- 大西宏のマーケティングエッセンスさん
- 松浦晋也のL/Dさん
- 映画コンサルタント日記さん
- シネマトゥデイさん
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コメント
トラックバックありがとうございます。
個人的に宣伝攻撃をした作品と比較するため(というより、興味のあった話題に言及するため)に行ったのですが、方々で絶賛の声が多く見受けられ、自分も見てきましたが…
本当にいい作品でした。
やはり、宣伝の多さ=いい映画とは限りませんね(と言いながら、「ブレイブ」も「ゲド」も見ていない)。
投稿: naitou-sou | 2006/08/17 01:01
こんにちは。
『時かけ』は確かに評価高いですね。
私の周りでも10人いたら10人ともよかったといっています。
方やブレイブストーリーは10人いたら10人とも評価が低かったです。
ゲド戦記もかなりの確立で評価が低いですね。
ただ、ゲド戦記はいいという人もいるというダークファンタジーだそうなのでいこうかなと思っています。
投稿: marglid | 2006/08/17 11:21
naitou-souさん、marglidさん、
コメントありがとうございます。
僕も、
「ゲド戦記」や「ブレイブストーリー」(あと、
「日本沈没」も)を
見に行くべきではないとは思いません。
良い作品が見られていないのはもったいないですが、
たとえ内容がいまいち(「ゲド」も「ブレイブ」もまだ
見ていないので、私がそうだと思っている訳ではないです)
だとしても、これはこれでイベント映画として見られても
良いんじゃないかなぁと。
なんか、悪貨をすべて排除すべきという、
潔癖症の人が多すぎるような気もします。
良貨は悪貨がたくさんあって初めて成立するような
気もするんですよね。
金かけてもあかん作品があるからこそ、
良質な作品が目立つわけで。
投稿: 六甲びと | 2006/08/19 14:22