アニメ映画『時をかける少女』と『ゲド戦記』をめぐる言説(その1)
40年前に発表以来、各時代に、ドラマ、映画の
映像化作品で、新たにファンを開拓し続けている
日本SFジュブナイル小説の名作中の名作『時を
かける少女』(筒井康隆)。
それが、新作アニメ映画になったとのこと。
初夏の角川ヘラルドさんのラインアップ説明会でも
紹介されていたが、その際の主題歌(奥華子の楽
曲)がなかなかよかったので「ま、どんなもんかなぁ」
という感じで、先週梅田ロフト地下のテアトル梅田に
見に行った。
最近のミニシアターのアニメなんて、そんなに混む
こともないやろうと思っていたら、なにやら入場待ち
の人の列。映画館の方からも、チケット購入の際に、
整理番号が大きいので、「前の方の席になると思い
ますがよろしいですか?」みたいに恐縮された。
え?
なんで、こんなに混んでるのん?
と思い、映画館の方に「この映画、こんなに混んで
いるのですか?」と訊ねると、「そうなんですよ」との
こと。
その日の最終上映回は、ほぼ満席でした。
NHKの「タイムトラベラー」、大林監督+原田知世の
映画といった作品のやや重たい感じの湿度のある
質感とはうって変わって、カラッと乾いた、そして非常
に明るい現代的な青春モノに生まれ変わっていた。
特に、主人公の躍動感が特筆モノ。
それを生み出したのが、タイムトリップ(本作品では、
タイプリープと呼ぶ)の方法。
原作及び今までの映像化作品では、時空を飛ぶきっ
かけが受動的だったのですが、本作ではリープ(跳
躍)という表現どおり、主人公がジャンプしてゴロゴロ
と着地することによって過去の時空間に到達する、
つまり能動的に自らの意思で時間を飛べる。
これこそが本作の鍵。
ちょっとした気まずいこと、ちょっとした失敗のやり直
しに、せっかくの能力を、能動的に無駄遣いする。
う~ん、このお手軽なリセット感覚こそが今の青春。
でも、青春時代には、今から振り返るとほんとしょ~
もないことが、世界の一大事みたいに感じて、やり直
したかったもんだよなぁ。
その表現がうまい。
しかし、そのお手軽な繰り返しにより、主人公にとっ
てとんでもない重い事態を出来させてしまう。
それに対する、未来からの訪問者と主人公のおこな
うリカバリーがクライマックス。
このリカバリーの流れの中で、能天気だった主人公
の心理面に深みが増す成長がおとずれる。
ストーリー、アニメーション上の演出ともに高質。
特に、タイムリープの繰り返しを、同ポジの使用に
よって展開させるあたりが、「ああ、これこそが日本
のアニメの良質な作品なんだよな」と思わされる。
未来からの来訪者が現代にやってきた理由が少し
弱いとも思えるが、それはほんの小さな瑕疵だ。
細田守監督の繊細で緻密な演出を味わいたかった
絵コンテを購入してしまった。
(ちょっと長いので、次のエントリーに続く)
<本作品のTB先>
『時かけ』の作品の質を評価しておいでのみなさん
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コメント
はじめまして.
管理人さんの感想を読ませていただくと, 「時をかける少女」はとても面白そうな作品のようですね. 「ゲド戦記」は観にいったことがあるのですが, 同時公開されていたこの作品は見逃しておりました. 予約が取れない映画館で上映なのでキツイですが, ゼヒ今度観にいこうと思います. とても参考になりました.
投稿: たけざお | 2006/08/17 00:48
たけざおサン、コメントありがとございました。
「時かけ」は、暖かく、明るく、素直に楽しめる
ほんとに良作でしたよ。
ぜひ、ご覧になってください。
「ゲド戦記」については、
ココ最近のジブリの作品から見て、
私はあまり食指を動かされないため
見ていないので、
内容についての評価はできません。
別に世間の評判が悪いからと言って
ご自分が良い、面白いと思うのがおかしい訳では
ないので、好きは好き、自分はここが面白かった
っていうことで、よろしいのではないでしょうか。
投稿: 六甲びと | 2006/08/19 13:52