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2007/02/07

被害者参加裁判制度は、本当に大丈夫なのか?

当ブログでは、あんまり、政治時事ネタについてはエントリーをしてきていなかった。

例えば、柳沢厚生労働大臣の「“女は子どもを産む機械”発言」とやらも、多くのブログでネタになっているようだが、あまりエントリーのネタとしては、食指が動かない。
もちろん少子化に対する厚生行政について、考える部分もあるのだが、今のメディアの報道を発端とするネット界でのやりとりは当該文脈の中での柳沢大臣の言葉遣いの問題や、厚生行政の不備に対するきちんとした批判という以上に、メディアのフレームアップ機能の暴走による議題設定に本質的に大きなずれがあり、辟易しているという方が事実だ。

しかし、そんな中でも、最近のニュースで非常に気になり、しかもメディアの議題設定がきちんとなされていないものが一件あったので、それについて、少し触れておこうと思う。

法務大臣の諮問機関、法制審議会が、犯罪被害者や遺族が、刑事裁判の過程に加わる「被害者参加制度」の要綱案をまとめたと、1月31日の報道であった。
毎日新聞記事
朝日新聞記事

どうやら、もともと、犯罪被害者白書の中で「犯罪被害者等のための具体的施策」というかたちで方向性が示されていたものが、より検討が具体化されたということのようだ。
(ただ、『法制審議会刑事法(犯罪被害者関係)部会』の報告は、その前の回である1月11日開催分の第7回会議までしかネット上にアップされていない)

たしかに、凶悪犯罪と言われる多くの事件のその後の裁判報道を見ていると、日本の刑事裁判においては、犯罪被害者はほとんど蚊帳の外におかれ、彼らの心情への配慮が欠けていたように見えることは否めない事実だ。

飲酒運転による暴走での交通事故で、子どもを失った遺族。
逆恨みによる残酷な殺人事件の遺族。
ストーカー殺人の遺族。

たしかに、被害者本人、そして残された家族の悲哀と怒りはいかばかりか。そのため、全国犯罪被害者の会が、いろいろと活動をしていたのも知っている。

しかし、一方では、周防監督の『それでもボクはやっていない』で指摘された、日本の警察・検察・裁判所が連携した、日本の犯罪裁判の事実上の“推定有罪”を前提とした、有罪製造ベルトコンベアとでも言うべきシステムが、過去、多くの冤罪被害者を生み出してきた(結果的に、冤罪が認められた方はまだ救われる。今も、実は冤罪なのにそれが明らかになっていない人もいるかもしれない)ことも否定できない。

特に、一般市民が審理に参加する「裁判員制度」もスタートする訳で、裁判員となった一般市民を前に、被害者が感情をぶつけた場合、被告の犯罪行為の起訴事実認定の部分に著しい先入観を与えないだろうか。

特に、今回の柳沢発言に対する反応に代表されるように、最近の事件の際の世論の脊髄反射的反応を見ると、冷静に、論理的にものを考えるよりも、被害者の感情にだけ感応し、被害者の悲しみや怒りが晴れるようにしてあげなければ、という感情的反応による起訴事実認定及び罪状判断をしかねないように感じる。

例えば、松本サリン事件の際、オウムの地下鉄サリン事件がもっとあとにおこっており、その間に河野さんが逮捕起訴されて、この制度のもと裁判に入っていたとしたら。
映画『日本の黒い夏 [冤enzai罪]』
で描かれたように、河野さんが犯人であることに疑問を呈する報道をした放送局に、「警察が言っているから、あいつが犯人だ」「犯人をかばうような報道をして、被害者の気持ちを考えているのかっ?」といったような抗議の電話をするような人が多くいたとのことだ。
あの事件の被害者本人、遺族が、裁判の場で、感情をぶつけていたとしたら、裁判員はその感情に同調し、河野さんを有罪にし、しかもとてつもない量刑を与えるという、それは、本当におそろしいことになったのではないか。

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