プロ野球NPBのビジネスモデルは、何を変えるべきなのか
さて、私は、あまり、プロ野球NPB対サッカー/Jリーグの構図にはしたくはないのですが、日本国内のスポーツビジネスについて語るには、どうしてもNPBとJリーグを比較しつつ語らざるを得ません。
NPBの現状は、ジャイアンツ戦の放映権料と、その幅広い人気を中核として獲得してきたテレビ露出にともなう宣伝効果を期待する親会社の宣伝費と言う名の補填こそが球団ビジネスの根幹です。
しかし、それでも今の選手人件費を中心とする経費を、もはやまかない切れない状況になりつつあります。
さらに、そのシステムを支えていたジャイアンツ戦の視聴率が、低落傾向にあり、その結果、放映権料も価格下落し、放送試合数も激減しており、少なくともセリーグの放映権販売収入は減少しています。
また、もともと放映権販売収入がほとんど無かったパリーグは、それでもプロ野球の放送及び関連報道露出による宣伝効果で、親会社が赤字分を宣伝費として補填していた訳です。
ですが、ジャイアントを中心とするNPBのバリューが低下すれば、報道等での露出量も従来ほど見込めなくなり、その結果、親会社として広告宣伝費として補填する金額と期待する宣伝効果のバランスが崩れ、支えきれなくなります。
今のような宣伝効果が減少していく流れの中では、過去の映画会社、新聞、鉄道会社のように、食品企業やIT企業も手を引く時期がいずれ到来することでしょう。
それだけではなく、もともと、こういった新興企業が期待する宣伝効果とは、認知獲得を急速に行うことですから、いったん一定水準の認知に至れば、それ以上継続する必要性も(あまりにも膨大な球団維持コストと比較して)ない訳です。
このような構造を見ると、どうしても、なんらかの改革が必要であることは否めません。
で、その方向性は、上記の著書で大坪氏も指摘しているように、ここ10年くらいで、圧倒的に権利の現金化力でNPBに差をつけて成長してきた、成功している海外事例を参考にするしかありません。
しかし、現在のプロ野球のビジネスモデルを、NFLやプレミア型に変更しようとすると、よくジャイアンツの前“オーナー”は、個別のチームの企業努力を無にする、共産主義的だとかなんとか言うわけです。
また、ソフトバンクの孫オーナーなども、同様のことを言います。
(しかし、この「オーナー」という言葉には違和感がある。だって、日本の球団はあくまでも、親会社という法人が所有しているのであって、個人が所有しているのではないのだから。よって、正確に言えば「オーナ企業代表者」となるでしょう。もちろん、親会社がオーナー企業である、ソフトバンクの孫氏、楽天の三木谷氏、ロッテの重光氏のようであれば、「オーナー企業代表者」=「球団オーナー」という構図は描けるでしょうが)
ですが、NFL、プレミア、さらにMLB、NBA、そしてJリーグのビジネスシステムを、十把一からげにして“共産主義的”などと言うのは、頭が悪すぎます。
個別の事例をよく見れば、それぞれ違います。
そして、これらのリーグの施策の中から、個別施策をうまく抽出すれば、各チームが一致協力して全体のパイを拡げつつ、かつ彼らの言う自由競争の部分を十分に担保しておくことは可能になるのではないかと思います。
まず、ジャイアンツの前“オーナー”が固執する、NPBの自由競争下での、球団自らの努力による、収入の格差のうち、放映権からの配分の金額の差は、どの程度だったでしょうか。
ジャイアンツ戦の放映権料が1億円の時代、各チームのホームゲーム放映権販売収入はジャイアンツがホームゲーム65~70試合で65億~70億円を得ていたと推測されるのに対し、セリーグ各チームがホームでのジャイアンツ戦13~14試合を含め、20億円程度。
パリーグは、ジャイアンツ戦がないので、地元ローカルを中心に5~10億円程度ではなかったでしょうか。
とすれば、つまり、NPBの各球団の“自助努力”による放映権販売収入の格差は50億円~60億円程度だったと推定されます。
⇒次に続く
野球批判派の代表格としての「日本の国民的スポーツは野球か?それともサッカーか?」の最新エントリーにTBしておきます。
また、コメントをいただきましたので、「大西宏のマーケティング・エッセンス」さんの野球界とテレビ界の問題を指摘するエントリーにもTBしておきます。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント