スポーツビジネスが各国に占める割合から、放映権料を考える②
さて、一方、日本のプロスポーツビジネスですが、Jリーグは、よくご存知の通り、イングランドのサッカーのプレミアリーグやアメリカのアメフトのNFLと同じく、リーグトータルとして放映権料、さらにリーグスポンサーなどまで、一括交渉をしており、Jリーグ各チームへ、配分をしています。
放映権料合計はトータルで約52億円となっています。
一方、日本のプロ野球の方は、これまたよくご存知のように、球団個別でのホームゲームの放映権交渉となっています。
しかし、実際上は、長い間、ジャイアンツの試合しか、つまり、ジャイアンツが自らのホームゲーム約65~70試合、セリーグの各チームのホームでのジャイアンツ戦13~14試合しか、全国放送権としてのバリューが認められてきませんでした。
そして、その放映権料は、最高で約1億円と言われてきました。
しかし、最近のジャイアンツ戦の視聴率低迷により、一試合あたりの放映権料は明らかにダウンしているようですし、全試合売れることも無くなってきました。
また、各地方ではまだまだそれなりに人気のタイガースやドラゴンズ、ホークスあたりですが、地元ローカル放送での視聴率はジャイアンツの全国・関東圏ほどの低落はないようです。
よって、ジャイアンツ戦以外でも、地元の人気チームの中継ニーズは無い訳ではないのですが、ローカルだけでは、さほど高い放映権料は獲得できません。
第二の経済圏である関西圏ローカルの地元のタイガース戦でも、放映権料は1,000万程度なのでしょうかね(推測)。
よって、単純に日本プロ野球の放映権収入は、最も大きかった時期でジャイアンツがらみの140試合×1億円+αということで、トータル150億円強程度だったのではないでしょうか。
そして、現在はその市場規模は縮小してきており、下手すると100億円強くらいまでに落ち込んでいるかもしれません。
改めて、この金額と欧米の金額を比較してみましょう。
わが国日本のGDPは、4兆7991億ドル=約566兆円(世界全体の10.8%)、曲がりなりにも世界第二の経済力を持つ国です。
そして、ファン同士で嫌いあっている人もいるようですが、それでもプロ野球とサッカー/Jリーグが日本国内の2大スポーツビジネスであることを否定する人はいないでしょう(サッカー日本代表は別ね)。
だと言うのに、この国のトップスポーツビジネスである野球+サッカーに対して国内放映権として支払われている金額が、最大値で年間200億円程度ですよ。
一方、アメリカのGDPは、12兆4389億ドル=約1467兆円(世界全体の28.1%)、さすがに日本の2.6倍程度です。
それに対して、4大スポーツを合わせると、NFL+MLB+NBA+NHLで、約3658億円+約492億円+約472億円+約81億円で、年間約4700億円にものぼる放映権料を、アメリカは国内スポーツ界に支払っています。
また、イギリスのGDPは、2兆2950億ドル=約271兆円(世界全体の5.1%)、日本の半分弱です。
(なお、EU全体としては、だいたい14兆9510億ドル=約1764兆円(世界全体の33.8%)と、既にアメリカを超えています)
ですが、プレミアリーグの国内テレビ放映権だけで、年間約1355億円を、イギリスは国内スポーツ界=国内サッカー界に支払っています。
実は、国家としてのイギリスには、さらに中村俊輔が活躍するセルティックが所属するスコットランド・プレミアリーグも含まれますし、ラグビーもイギリス国内ではかなりの放映権の価値を認めてもらっているので、それらを合わせるともう少し多くなるでしょう。
いかがでしょう。
GDP比率で言うと、日本は、アメリカやイギリスに比べても、国内トップスポーツリーグの放映権に対して10分の1くらいしか支払っていません。
スポーツファンである私は、やはり、それはあまりにも少なすぎると感じるのです。
テレビ局が、ジャイアンツ戦の1試合の放映権に1億円も支払い、その結果プロ野球を優遇的に支えてきたとして批判する方もいます。
特に、ここ数年の低下した視聴率では、テレビ局も中継の広告が売れず、1億円もの放映権料はビジネスとして折り合わなくなってきているのに、それでも一定の金額を守っているのは、テレビ局も「プロ野球防衛軍」だと言う訳です。
※このジャイアンツ戦の放映権をベースとしたプロ野球ビジネスの崩壊の序曲を、生暖かく(意地悪く?(^^;))見守っている方々もいます(例えば⇒プロ野球の視聴率を語るblogさん、プロ野球斜め読みな視点?さん)
でも、もし日本におけるスポーツの位置づけが欧米並み、つまりスポーツに関してお金を支払うという価値をきちんと認める国だったとすれば、プロ野球に対しても、そしてもちろんJリーグに対しても、もっと放映権料を払うポテンシャルはあったはずだし、今もあるはずです。
むしろ、少なくとも80年代から90年代にかけての、プロ野球に本当にバリューのあった時期には、買い叩かれていたとも言えるくらいではないでしょうか。(もちろん、これは放映権の交渉を各球団が個別に行うことに固執していたこと、そして最もバリューのあったジャイアンツが、親会社讀賣新聞の系列である日本テレビに独占的に放映権を販売していた、という彼ら自身の事情に原因がある訳で、自業自得なのですが)
つまり、私は、日本のテレビ局は、スポーツに対して、もっと放映権料をガンガン払うべきだ!とすら思うのですよ。(視聴率のことは、少し置いておいてください)
ですから、むしろ問題は、なぜ、国内スポーツプロ野球側も、Jリーグ側も、この程度の放映権料しか獲得できていないのか。
どうすれば、プロ野球もJリーグも(そしてラグビートップリーグも、Vリーグも、bjリーグも)欧米並みの放映権料を獲得することができるようになるのか、ということをスポーツファンは考えるべきだと思うのです。
⇒③に続く
野球批判派の代表格としての「日本の国民的スポーツは野球か?それともサッカーか?」の最新エントリーにTBしておきます。
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