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2008/02/24

なるか、三洋電機のパーフェクトシーズン。

NFLで、レギュラーシーズン全勝、圧倒的な攻撃力でスーパーボウルまで勝ち進んだ、QBトム・ブレイディ率いるニューイングランド・ペイトリオッツ。
マイアミ・ドルフィンズ以来となる、レギュラーシーズン全勝+ポストシーズン勝ち抜き+スーパーボウル優勝を目前にして、モンタナ・マジックの『ザ・ドライブ』に匹敵する、NYジャイアンツのQBイーライ・マニング(しかし、アメフトって、家系スポーツなのかね?)に奇跡のドライブを許し、あと1分耐えれば達成できた“パーフェクト・シーズン”を逃してしまった。

さて、それに対して、国内ラグビーでは、“初の”パーフェクトシーズンにチャレンジするのが、“無冠”の最強チーム、三洋電機
トップリーグの創設以来、初めてレギュラーシーズンを13戦全勝で終え、ポストシーズンのマイクロソフトカップの準決勝でも見事勝利し、決勝のサントリー戦に勝利をおさめれば、初のパーフェクト=全勝シーズンを達成する。

とは言うものの、ラグビーっつうのは、トップリーグ以前の社会人、そして大学でも、チャンプになるには、だいたい各地区のリーグ戦を(全勝で)優勝して、社会人選手権/大学選手権のトーナメントを決勝まで勝ち抜いたチームが社会人/大学日本一になっていた訳で。
例えば、今年の大学の早稲田大学やV3時代の同志社大学にしろ、社会人のV7時代の神戸製鋼のV2からV6のシーズンにしろ、パーフェクトシーズンと言えば言えたわけだ。
(日本選手権まで含めたパーフェクト・シーズンになると、大学/社会人の一方は達成できなかったのではあるが)

だが、トップリーグの創設後、神戸製鋼、東芝府中、サントリー、NEC、ヤマハ、トヨタ、三洋電機といった強豪チームは、本当に実力的に紙一重でしのぎを削り、前節の相手のめぐり合わせ、その節のコンディション、主力選手の怪我、そして対戦チーム同士の相性などで、勝敗が簡単に入れ替わる。
また、たとえ下位チーム相手でも、少し気を抜いた試合ぶりだと、足もとをすくわれて、全勝チームは現れなかった。

それが、今年、遂に三洋電機が全勝という偉業を成し遂げた。
三洋の試合を全試合見た訳ではありませんが、なんと言っても、おそらくMVPに選ばれるであろうSOのトニー・ブラウン選手。
昨年まで、トライネーションズなどの南ア代表の試合のため、シーズン途中抜けることもあったが、今年は1シーズン司令塔の位置に立ち続けたのが大きかった。
とにかく、ブラウンの時間とエリアのマネジメントはレベルが違う。
昔の新日鉄釜石の松尾選手、マツダのミルン選手といったすばらしい選手もいたが、日本在籍選手の中では、史上No1ではないだろうか。

エリアを押し込まれている時も、単純にキックで大きくエリアを取る時と、あえて中央でFWを使って時間を消費し、タッチライン際にスペースをつくってから、両翼の三宅、北川へ散らし、長躯ランニングでエリアを稼ぐ時の使い分け。
さらに、中盤から相手エリアに入ると、今度は最後の仕留めのプレーをイメージし、そこから逆算したかのような仕込みのプレーを粘り強く続け(それに応える、三洋のFWやCTBあたりの下働きもすばらしい)、ここぞと言う時に、キックパスやロングの飛ばしパスなどでトライを取りきる。
また、相手ボールの際にも、王様然としているのではなく、積極的にファーストタックラーとして、そしてバッキングアップディフェンスとしての稼動域も幅広い。

もちろん、昨年までも、それなりのプレーをしていたが、今年のプレーは本当にすばらしく、例えば早稲田大の山中選手や法政大学の文字選手、桐蔭学園の滑川選手、関西学院の小樋山選手、伏見工業の井口選手なんかが、彼のプレーをリアルに見られる価値は計り知れないだろう。

先週のマイクロソフトカップの準決勝の東芝府中戦。
レギュラーシーズンは、三洋電機が41-0と圧勝したのだが、昨年まで3連覇の東芝府中は、レギュラーシーズンには欠場したキャプテン、SOの廣瀬選手も復帰するとともに、さすがに意地をかけて、入念な準備、対策(さらに、雪による順延のため、東芝側は2週間の準備期間があいていた)を施してきた。

前半、東芝府中が昨季までのスタンディング・ラグビーを体現し、終始敵陣で試合を運び、8-3とリードして試合を折り返す。
後半、三洋電機は後半開始早々ブラウン選手のPGで点差を詰め、その直後、インターセプトから、右ライン際に浮いていた2シーズン連続のトライ王、WTB北川選手が、足もとの悪い中、ミスマッチ(1対1のDF相手がFW1列目だった)を突いて、決定力のあるステップとスピードと逆転のトライを決め、13-8。
しかし、東芝府中は、FWを生かしてエリアを押し込み、吉田選手のPGに続き、前キャプテンCTB冨岡選手の、まさかのDG成功で逆転。
さらに、スクラムから圧力をかけて、三洋SH田中選手のパスが浮いたところを、見事に飛び出したSO廣瀬主将が、インターセプトから独走トライ。
残り、10分で21-13と、1トライ1ゴールで追いつかない点差に。

だが、ここからがブラウン、いや今年の三洋電機のしぶといところ。

東芝府中のFWの動きが少しにぶり始め、その影響でBKのディフェンスも縦に出ざるを得ず、守備範囲の幅が少し狭くなってきたところを、上手く突破役を使い、ゲインラインを突破させるブラウン。
特にFBに途中交替で入った吉田選手を中心にCTB榎本主将、ロックのコリニアシらが、ミッドフィールドで前進する。
そこに、WTB北川がうまくフォローし、1トライを返す。

そして、残り1分。
東芝が、時間を消費するために、モールでボールをキープするが、三洋が前進をゆるさない。
モールのルール上、東芝はボールを展開せざるを得なくなり、CTB冨岡が仕方なくノータッチキック。
それを取った三洋WTB三宅が一気にカウンター。
さらに、北川、ブラウン、吉田とつなぎ、トライライン直前まで突進。
必死にディフェンスに戻る東芝の抵抗で左隅でのラックとなり、プレーが切れると試合終了となるホーンが鳴る!
あと、1mを取るしかない三洋。
そんな中、ブラインドサイドに穴を見つけたブラウン自らが、FLオライリーのサポートを受けて、東芝のDFをぐいっと押し込み、もぐりこんで、逆転のトライ!

神戸製鋼のV3時の決勝戦のイアン・ウイリアムスのトライや、サントリーとの同点優勝時の尾関のトライといった悪夢を振り払い、今回は、三洋電機がみごとに逆転勝利をおさめた。

そして、決勝戦は、サントリーとの対戦。
サントリーのセットプレーの安定感は抜群で、レギュラーシーズンでも三洋電機は苦しめられた。
この試合でも、サントリーのセットでの圧力での中での、ブラウンのゲームコントロールが鍵になるだろう。
スクラムの多い試合になると、サントリーが優位に立つかもしれない。
さらに、サントリーは、インパクトプレーヤーのバックアッパーも多く、消耗戦になったあとに交替選手が爆発するという流れも考えられる。

しかし、今年は、ブラウンの奮闘を称えて、三洋の年にしてあげたい気がする。
特に、サントリーは、CTBニコラス選手のオフロードパス(⇒CTB平選手)にミッドフィールドの突破を任せ(きりにし)ている感もあるので、三洋の榎本、霜村両CTBに押さえきってもらいたいものだ。

ただ、せっかくのこの最高の一戦の舞台として、秩父宮の芝生をなんとかしてくれ!

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