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2008/03/23

消えゆく、日本の原風景のコミュニティを考えさせられる写真集『限界集落』

新潟・佐渡島の海岸で、デジタル・カメラを片手に波を撮り続けた写真作品(『NAMI』)で、ヴィジュアル誌『FOIL(フォイル)』がおこなった公募「FOIL AWARD(フォイル・アワード)のグランプリを獲得した梶井照陰氏

梶井照陰氏は、8年前に真言宗の祖父の僧職を継ぐために佐渡島へ移住したのち、佐渡沖の波の特性を綿密に調べて、レンズを向け続けたという写真は、あたかも生命力を帯びているような波の姿をダイナミックに捉えており、地球のパワーを感じます。

そんな梶井氏が、今度は、まったく異なるタイプの写真集(フォト・エッセイ?)を出版されました。

“限界集落”とは、長野大学の大野晃教授が提唱された概念で、

「65歳以上の高齢者が半数を超えて一人暮らし老人が滞留し、冠婚葬祭など社会的な共同生活が困難になった集落」のこと。

である。国の調査では、共同体機能が著しく低下した“限界集落”は、約8千ヶ所近くあり、そのうち423ヶ所は10年以内に消滅するとも言われている。

もちろん、限界集落は、佐渡島にも多く存在する。
梶井氏の住む佐渡島北部の鷲崎集落も、海沿いの段丘に260名ほどの住民が住むが、高齢化率39%と、“限界”が近づいてきている。
そこで、梶井氏は、限界集落の迎える集落消滅で失われていくものの大きさを感じ、「このまま、こういう集落がなくなり、都市に一極集中して良いのか、という危機意識から取材をやり始めた」という。
北海道から九州まで各地の集落の風景や、そこで出会ったお年寄りの暮らしを、撮影するとともに、インタビューもおこない、集落に生きるお年寄りたちの築いてきた地に足ついた生活の知恵が、“都市の知識”の薄っぺらさに比して、あまりにも軽んじられている現状に対する、静かな憤りを綴っている。

梶井氏の文章も考えさせられるが、やはり、地域の人々の味わいのある表情を深みをもって捉えた写真が絶品です。

もちろん、“限界集落”すべてを維持し続ける社会的コストやリスクというものも考えなければならない。単純なノスタルジーだけで、なんとかなるものでもない。社会経済性という点から考えると、ある程度のコミュニティの集約化も仕方がないとも言える。

しかし、一方で、農山漁村の田舎は、時代の流れに乗って消えていくのは仕方が無い、いや消えても良い(さらには、都市部の生活インフラの整ったところへ強制移住させてしまうという案すらある)というのは、やはり、違うのではないか。
日本という国や文化を、縁の下で支えてきた周縁の農山漁村の各地域に、その土地の環境に適したカタチで根付いている多様な知恵や技術、価値観、伝統などを、すべてを守れないにしても、どこまで、どのようにして継承し守れるのかということは、やはり大切な視点であると思う。

特に、高齢化でしゃあない、時代の流れだとか簡単に言っちゃう人には、「誰だって年を取るんだ」ということだけは、心に刻んでおいてほしいもんだ。


現在、東京のFOIL GALLERYで、写真展も開催中とのこと(3月16日(日)まで)。

<本エントリーのTB先>
梶井氏の写真展についてエントリーされている写真の由無し事さん。

あと、“限界集落”について、地域の議員さんや首長さんなどが考察されているエントリーにTBをお送りいたします。

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