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2010/03/01

素人なりに岡田ジャパンの戦術的問題点について考えてみる(その2)

さて、この本の中で、イタリア人指導者たちが、分析の結果、指摘している日本が繰り返し犯してしまっている戦術的な問題点は、

①守備時の基本的なポジショニングである「ディアゴナーレ」が欠如している
②FWを中心に、報われない深追い「プレッシング」が多すぎる
③その原因である、深すぎるMF及びDFライン
④ディレイで良い時にも関わらず、ボールホルダーへのむやみに突っかける
⑤ボールホルダーへのマークの担当の順番が不適切
⑥FWや攻撃的MFが、下がりすぎる
⑦守備時のポジショニングの崩れによる、攻撃への切り替えの遅れ
⑧攻撃時にDFが予防的ポジショニングをとれていないことによる守備への切り替えの遅れ
⑨特にDFが、不用意にポジションを移動することで、ボール保持時のパスコースが限られる

などである。

などであると言っても、これだけ指摘されると、「ほとんどダメじゃん」とも思えてくる。

しかし、一方では、報われないにも関わらず最後までボールを追いかける選手たちの献身的姿勢や、これだけ戦術的欠点を抱えながらも決定機をつくりだす選手たちの才能・技術などには、日本代表のポテンシャルも一定の評価をしてくれてもいる。

だからこそ、もう少し、全体的なポジショニングの基本的なルールの徹底と、もう一つはプレーのメリハリ・ペース配分をおこなうことさえできれば、せっかくの献身的な姿勢と、特に攻撃面で重要な選手たちの才能を、効率的に生かすことができ、それによってもっと上を目指すことができるというプラスの評価もされている。

これらの指摘を、いちおう理解したうえで、岡田ジャパンについて、さらに考えてみたい。

ただ、最も根本的な指摘である①については、正直、気づかなかった。
ボールホルダーが自分のゾーンに入ってきた時には、ラインから出てボールホルダーにアプローチして、ラインに角度をつける。そして、次のゾーンにボールが移った時は、そのゾーンを担当する選手がアプローチして、自分はラインに戻るなんてことは、前提として、当たり前にできているものと思っていたため、見逃してきていた。永年サッカーを見てきたくせに、何を見てきたのか、おれ、と思ってしまう。

そんな人間が、何か語っても、なんの説得力もないのですがぁ、まあ気を取り直して…

まず、これらの中で、すぐに修正が可能で、最初に手をつけるべきことは、②&③であろう。

現在、岡田ジャパンがやろうとしているのは、前を向いて余裕を持ってボールをキープする相手、特に最終ラインに対してすら、90分間いついかなる時にも、むやみに「プレス」をかけようとするものだ。

しかし、相手ディフェンスが2枚、深い位置で、どちらも完全に前を向いているような状態ですら、全力ダッシュで、しかも遠い距離からプレスをかけるのは、無駄以外のなにものでもない。
万全の体制にある相手DFに対しては、パスコースをある程度、限定するだけでいいはずだ。
いきなりボールを取る気満々で全力ダッシュしても、90分間フルタイムもつわけがない。
全力ダッシュでボールを奪いに行くのは、ボールを受けたDFの体勢が悪かったり、相手が隙を見せた時だけで良いはずである。

しかし、例えば、去年のオランダ戦について、この言わば「カミカゼ・プレス」を、岡田監督は「60分は通用した。これを90分間続けること」と総括した。

これは、どう考えてもおかしい。
サッカーのような対戦ゲームは、相手あってのことだ。
対戦ゲームの肝は、相手に、試合中にいかに疑念を持たせるか、確信を持ってのプレーをさせないか、迷いながらプレーさせるか、である。

これだけ、情報が流通している時代、しかもワールドカップと言う、それぞれの国の代表が真剣勝負を行う場である。
よって、本大会までには、カメルーン、オランダ、デンマークの3カ国は、日本のプレーについて、分析しているはずだ。

ということは、「カミカゼプレス」は、相手にとって、想定の範囲内だ。

あまり情報が無い(親善試合で、日本程度の相手だと、オランダは、あんまりスカウティングしていなかっただろう)初対戦の時ですら、試合の途中で、「どうせ、途中で足が止まるであろう」と、いなすボール回しを始めるくらい、戦術対応力が高かった。
ワールドカップでは、3か国とも、最初っから、「カミカゼプレス」、それも、今回指摘されているような欠点を抱えたままの疑似「プレス」をすることを前提に、試合全体の流れを計算していなしながら、日本が足が止まり始めてから、急所を突く、ということをやってくるだろう。

そういうことをやられたら、あと4か月で、少々スタミナが向上し、コンディションがあがっていたとしても、90分間は、やはりもたない。

もっと賢く、頭を使って、大切なところ60分を選び取って「プレス」をかける。いや、もしかしたら60分分のエネルギーをさらに凝縮して45分間にして、選び取った時間に、さらなる強度で「プレス」をかけるという判断力を身につける方が大切だと、私は思う。

そして、そのためには、残りの45分は、「プレス」をかけずとも、相手をディレイさせる、ボールを回さされても「回させている」というくらいの余裕であわてない、守り方も、並行でできるようにならないといけないのだが。

ラグビーなんかでも、相手のラインアタックに対して、ディフェンス側は常に接点でターンオーバーを狙いにはいかない。
2次攻撃、3次攻撃くらいまでは、攻撃側が完全にデザインしているし、トップレベルだとプレー精度も高く、接点へのフォローも早いので、ターンオーバーのチャンスは無い。
その際は、きっちりとDFラインを構成して、ゲインラインを切られないようにおさえる。できれば、少々ファイトして、球出しのタイミングを少し遅らせるくらいの抵抗にしておく。
しかし、4次、5次攻撃となってくると、攻撃側も、アドリブが入ってくるようになり、その判断がずれたり、プレー精度が落ちた時には、接点へのフォローが遅れたりして、ボールキャリアーが孤立することがある。
その時に、一気に、集中して、ターンオーバーを狙う。

このじっくり受け止める部分と、一気に集中して攻撃的に守るメリハリこそが大切なのだ。

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