総括(その4) でも、【肯定派】の、準備期間まで含めた絶賛には、少し、違和感を持つ
それに対しまして、事前から一貫しての「肯定派」の方(という括り方も失礼なのですが、まあ許して下さい)は、大会直前での戦い方の大きな変更について、岡田監督ならその程度織り込み済みであったはずだ。いや、実は、そんなに大きな変化ですらなく、準備段階からの延長線上にすぎず、岡田監督の計算通りだったとも読み取れるような表現をされているように見えます。
例えば、後藤健生さんは、大会直前で戦術変更をおこなったことは認めたうえで、
>4-1-4-1への変更には時間は必要ない。変更は論理の力で押し付けるのではなく、そういう機運が生まれるのを待つ。それが、12年経って指導者として経験と実績を積み、指導者として進化した岡田監督のやり方だったのではないか。それにしても、大会直前に戦い方を変更するのだから、リスクは大きい。だが、それが結果的にチームの中からマンネリ感を一掃するという副次的な効果も生み、見事にはまってチームが生まれ変わった。岡田武史の賭けは見事に当たった。
と書いている。特に、例のスイスの夜とか言われる、選手からの意見についても、織り込み済みだったというようなニュアンスです。
まぁ、その直後に、
>いや、そんな深慮遠謀などなかったのかもしれない。
とはおっしゃっているのだが…。
また、サッカー講釈師、武藤文雄さん(一サポーターの方の個人ブログを、プロの物書きと並列で扱うのは、少し重荷を負わせすぎとも思いますが、まあかなり著名サポーターな訳なので、ご容赦を)は、まず
>岡田監督は、本大会直前にチームのフォーメーションをずいぶんと修正した。驚く事に、これについて「過去の蓄積を打ち捨てた」、「付け焼刃」など文句をおっしゃる方がいらっしゃるようだ。
と書いています。
「否定派」の中でも特殊な人々以外の、いわば「是々非々」派(私も、自分をそう思っています)は、そこまで言っていないように思いますが、
こういう表現でまとめることで、「肯定派」以外の方を挑発しているようにも思えます(^^;。
さらに、続いて、
>そもそも、「過去の蓄積を打ち捨てて、過去それほど実績のないこの国で、2~3週間であそこまで組織的な攻守を完成させ、精神的にも充実していて、ワールドカップ本大会でベスト8まであと一歩のチームを作れる」としたら、岡田氏は「神」としか、言いようがないではないか。
>私は岡田氏を尊敬しているし、相当立派な監督だとは思っているが、もちろん「神」だとは思っていない。
ううむ、これでは、逆説的に「神」と言いたがっているように見えるのは、私だけでしょうか?
>先日述べたように、今大会での試合内容を見れば、岡田氏就任以来の積み上げが奏功したのは簡単に理解できる。
>当たり前の事だが、岡田氏が変えたのは作戦上の用兵に過ぎず、2年半の積み上げの成果として見事なチームを作り上げたのだ。
と、積み上げをかなり強調しておられますが、「付け焼刃」ではないものの、かなりの方向転換があったことは、私は、間違いないと思います。
デンマーク戦後の岡田監督自身のコメントで、
>「今年に入ってから結果が出なかったとか、いろいろなことがあるんですが、われわれがやろうとしているサッカーの中心となる選手の不調がJリーグを通しても、また代表で集まっても続いたと。戻るんじゃないかという期待を何人かの選手に対してしていたんですが、踏ん切りをつけないといけないというところにきて、起用法、システムを変えました。おそらくそれはW杯という重圧。日ごろ出ている選手の方がそういう傾向が強かったので、いろいろ話をしてみてもW杯の重圧みたいなものを感じたので、思い切ってここは決断しないといけないということで、システム、メンバーを変更しました。これはある意味、当たったとは言いますが、もしW杯の重圧とか不調がなければ、前のやり方でもいけたかもしれないと。これは分からないですが、自分の中ではそう思っています」
こう言っています。
まとめると、「われわれがやろうとしているサッカーの中心となる選手」である中村俊輔と内田が「W杯の重圧とか不調がなければ」『ハエプレス&ショートパスのポゼッション』サッカーという「前のやり方でもいけたかもしれない」と、この段階でも思っていたと言っている訳ですよね。
もちろん、このようなインタビューで語られる言葉が本心なのか、100%信用してよいかというと、慎重にすべきだとは思いますが、本大会のグループリーグ突破後の公式会見でのコメントですから、事前の国内の「マスゴミ」相手の言葉よりかは、信用してもよいかと思います。
そのうえで、この発言を読むと、中村俊輔と内田を外し、今大会のような戦い方へ方向転換したことは、かなり偶然によるものだった、それ以外に選択肢が無くなったので、嫌々ながらも開き直ってやっただけ、そうとも受け止められてしまうのです。
しかも、アンカーを起用し一定の手ごたえを感じた(はずの)イングランド戦の次のコートジボワール戦では再び「4-2-3-1」にしたり、カメルーン戦、オランダ戦でアンカーを置いたローラインでのプレッシングで「成功」したにも関わらず、デンマーク戦では「4-2-3-1」でスタートさせて試合開始直後の混乱を招いた(選手の方が、先に、アンカーを置いた「4-1-2-3or4-1-4-1」に戻すことを求めたという)りした、ということは、やはり、本心は、「4-2-3-1」による『ハエプレス&ショートパスのポゼッション』サッカーでやるべきだと考えていた、としか思えないんですね。
昨秋のオランダ戦以降、いや、アジア最終予選のウズベキスタン戦ですら、限界が見えていたにも関わらず。
ということは、今大会の素晴らしい内容と結果は、スイスの夜による、選手の自主管理、いわば『クーデター』の部分も大きかったのではないか、闘莉王曰く「下手クソは下手クソなりのサッカーをするしかない」は、監督に対しても向けられていた言葉なのではないかなぁ、とまで思えてしまう訳です。
ましてや、この戦い方におちつくまでは、
>不振の原因だった守り方に絞られた。個々が思いをぶつけ、意見はまとまらなかった。「FWが前から追わなければ重圧をかけられない」「とはいえロングボールを1本通されて失点する。後ろを固めた方がいい」。殺伐とした議論。関係者によると、主将のGK川口(磐田)は「ミーティングをやらない方がよかったのでは……」と悩み、岡田監督に内容を伝えるかどうか迷ったという。
>「監督がぶれている」と戸惑いを隠さない選手も数人いた。一体感という言葉は、およそ似つかわしくなかった。
(朝日新聞)やら、
>「あれをきっかけに選手が個別に話すようになった」。主将のGK川口が振り返るのは5月27日夜の選手ミーティングだ。韓国に0―2で敗れ、スイスに入った。チーム状態はどん底。話し合いは前線から積極的にプレスにいくかどうかで攻撃と守備の意見が対立した。穏やかな雰囲気ではなかったが、腹を割って話したことで選手は目覚めた。自分たちでやらなきゃいけない。以降、ピッチ上でも意見をぶつけるようになった。
>その2日後、イングランド戦前日の非公開練習では選手が口々に意見をぶつけた。岡田監督が紅白戦を止め、スローインからの戦術を指導している時でも、選手の激しい言い合いは止まらない。関係者が「非公開にしたいのも分かる。誰も監督の話を聞いていない」と振り返るほどだった。
(報知新聞)というような状況でもあったようなので…。
まぁ、スポーツの現場、特にサッカー日本代表の状況についての新聞の報道も、そのまんま、鵜呑みにはできないのではありますが。
そういう意味では、改めて後藤さんの
>「どちらの戦い方も視野に入れながら準備をしてきた岡田監督が、大会直前に単に流れに乗っただけ」という解釈もできる。それはそれ。タイミングを逃さず、過去にこだわり過ぎずに、感覚的に流れにうまく乗ってしまえる監督は名監督といってもいいのである。
という評価が、ニュートラルで、妥当なものじゃないかなぁ、と思うのです。
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