以前、メディアリテラシーについてのエントリーもしたことがあり
ますが、関西に住んでいる人間としてメディアリテラシーを考え
るのに、なかなか良い本が出ました。
日本放送労働組合関西支部でおこなわれた連続セミナーをもと
に、関西の放送業界の人間、メディア研究者などが寄稿したもの。
構成は、以下の通り。
序章 送り手のメディアリテラシー―関西の放送はどうあるべきなのか
第1章 関西ローカルの新しい形をめざして
第2章 関西のスポーツジャーナリズムを考える
第3章 メディアリテラシーの空間・学校・家庭
第4章 “共生”のために求められる地域放送とは
第5章 地域の放送資源の再発見のために
対談 地上デジタル時代の地域放送に向けて
―送り手に求められるもの(音好宏/黒田勇)
われわれ関西のスポーツファンとして、特に注目すべきは
第2章の1.「プロ野球報道の偏りと無定見 関西、パ・リーグ、
南海ホークスという立場から」です。
この節の担当は、『南海ホークスがあったころ』という著作の
ある関西大学社会学部教授の永井良和先生。
(“赤き血のイレブン”じゃないよ~(^^))
以前、私もオリックスと近鉄の合併問題の際に関西メディアの
阪神偏重の問題についてエントリーしたことがある。
私が、感覚的に語っていたにすぎないことを、事実を踏まえて、
関西メディアの阪神報道の量的偏向についての批判的検証を
おこなっておいでです。
もともとは、関西のプロ野球でも、本来はメディアによって支持
するチームが異なっていました。
例えば、関西テレビは阪急、朝日放送は近鉄でした。(南海は
記憶がないんだよな)
それは、メディアだけではなく、関西圏独特とも言える私鉄沿線
文化の象徴でもあったのです。
もちろん、巨視的に言えば、阪神が一番だったことは間違いない
し、85年の21年ぶりの日本一の時は阪神一色だったのですが、
それでも、その後も、10・19の近鉄であったり、「がんばろう神戸」
の際の仰木・イチローのオリックスなど、揺り戻しもあった。
しかし、一昨年の阪神の優勝の際には、完全に阪神一色に集
約され、塗りつぶされてしまい、その後もかわらない。
そんな中で、去年大阪近鉄がなくなってしまったわけですが、
その過程で関西のローカルメディアは、多様な関西文化や大阪
文化の危機だという意識で伝えなかったことが、本当に問題で
した。
特に、関西の文化の複雑性や多様性を支えていた私鉄沿線文
化の崩壊という視点で、メッセージを出すことができなかったの
が致命的であったように思います。
東京から発信される、関西=大阪=阪神=道頓堀というステレオ
タイプに、大阪のメディア自らが乗ってしまった。
それは、大阪がメトロポリタン(大都市)性を失った象徴とも言える
でしょう。本来、大阪ぐらいの巨大都市になれば、当然のこと、多
様性を持っており、単一のイメージなどでは括れないんはずです。
しかし、全国ネットとローカルという関係性から、東京のメディアが
完全に大阪=関西のことを一地方都市という視点でかため、ステ
レオタイプで大阪を切ってしまうようになった。
そして、ここが問題なのですが、それを大阪のメディア人が、完全に
受け入れてしまう。
そして、最悪なのは、メディアの中だけでステレオタイプなイメージが
垂れ流されるだけではなく、それを大阪人(メディア人だけではなく)
も、受け入れるがごとくそのイメージに合う行動を行うようになって
きてしまったことです。
永井先生は、他の研究で、ハワイのメディア上のイメージの研究を
されておいでなのですが、ハワイもアメリカのメディアや音楽、映画
などが押し付けた「最後の楽園」というステレオタイプを、完全に飲
み込んでしまい、自分で脚色して自己イメージを変えて生きてきた
ということを、論述されています。
それと類似のことが、それぞれの国において、シカゴであったり、
バルセロナであったり、上海であったり、メルボルンであったり、
釜山であったり、に相当する大阪という街におこってしまった。
しかし、永井先生の研究の最後にあるのですが、ハワイ側も最近
多様性を取り戻そうというさまざまな試みを行い、その結果アメリカ
本土のメディアとの大きな文化摩擦に直面しているとのことです。
大阪が、このまんま、東京メディア発のステレオタイプを内在化して
生きるのか、メディアの中でも多様性を取り戻すことができるのか。
特にスポーツ面や文化面での多様性の復活には、メディアが大きな
力を担うことになります。
本書は、ステレオタイプなローカル像の再生産ではない、ローカル
アイデンティティの構築を行うために、送り手に求められる視点とは
何か、をメディアに関わる人が、さまざまに論述しています。
一読に値すると思います。
あと、阪神タイガースが関西=大阪の象徴となってしまった、
そのプロセスを、カルチュラル・スタディー的に検証をされている
本が、井上章一先生の『阪神タイガースの正体』です。
こちらもご参考に。
<本エントリーのTB先>
本エントリーでは、関西での阪神戦偏重の問題を語って
いますので、プロ野球中継の問題をトータルに語っている
プロ野球の視聴率を語るblogさんにTBしておきます。
関西のマスコミやメディアはなぜ「阪神ダイガース」一辺倒なのか、
という問いを掲げておいでのドラジェfrom北河内さん

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